『AIで誰でもUIをつくれる時代に、デザインシステムは必要なのか?』——ここ数ヶ月、お客様からよくいただく問いです。私の答えは、明確に『はい、これまで以上に必要です』というものです。本稿では、その理由を3つの観点から整理します。
第一に、AIが生成するUIの『品質の保証』としてのデザインシステムです。生成AIは、もっともらしいUIを瞬時に作成しますが、ブランドの一貫性や、アクセシビリティの担保までは自動で行ってくれません。デザインシステムは、生成AIに対する『正解の参照点』を提供します。コンポーネントのバリエーション、状態の網羅、トークンの命名規則。これらが整備されていれば、AIに対して具体的な指示を出すことができ、結果として品質を一定以上に保てます。
第二に、組織の『判断の蓄積場所』としての価値です。デザインシステムには、単なるUI部品集を超えた役割があります。なぜこのコンポーネントは角丸を持たないのか、なぜこの色は使わないのか、なぜこのインタラクションパターンを選んだのか——その背景にある判断が、ドキュメントとしてシステムに刻まれていきます。これは、人が入れ替わってもブランドの文脈を維持するための、組織的な記憶装置です。
第三に、プロダクト横断での『一貫した体験』を実現する基盤です。一社が複数のサービスを提供する時代になり、ユーザーは『同じ会社のプロダクトなのに、別物に感じる』という違和感を敏感に察知します。デザインシステムは、複数プロダクトをまたいで一貫した体験を提供するための、唯一の現実解と言ってよいでしょう。
デザインシステムは、つくることそれ自体が目的ではありません。『つくり続けるためのインフラ』として、組織と一緒に育てていくものです。私たちは、お客様のフェーズや組織規模に応じて、デザインシステムの導入から運用、そしてアップデートまでを伴走しています。